【お勧め本】「シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕」

シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)何年か前に世界中で話題になった「ツール・ド・フランス7連覇のプロ自転車選手ランス・アームストロングがドーピング発覚で過去のタイトルを全て剥奪、そして自転車競技から永久追放」というニュースをご存知でしょうか?「ツール・ド・フランス」というのは、日本ではそれほど認知されていませんが、ヨーロッパを中心に爆発的な人気を誇っており、第一回大会が開催されたのが100年以上前(1903年)という歴史あるプロ自転車ロードレースです。ランス・アームストロングはアメリカ人プロ自転車選手で、ドーピング使用が発覚する前は、歴史に名を残すスーパースターでした。例えが適切か分かりませんが、当時のアームストロングは、バスケットボールプレイヤーならマイケル・ジョーダン、サッカー選手ならメッシやクリスティアーノ・ロナウドレベルの自転車界のスター選手でした。

そんなスター選手であったランス・アームストロングが上記に記載しましたように数年前にドーピング使用が発覚して、ツール・ド・フランス7連覇の偉業が剥奪されました。また自転車界から永久追放され、その名声は地に落ちました。本作「シークレートレース」では、かつてツール・ド・フランスを連覇していた時のランス・アームストロングのチームメートであったタイラー・ハミルトンがその当時アームストロングや彼自身を取り巻いていたドーピング事情、延いてはプロ自転車界全体を取り巻いていたドーピング事情を赤裸々に詳細に告白しています。ちなみにこのタイラー・ハミルトンもアテネオリンピック個人タイムトライアル金メダルを獲得したスター選手でしたが(後に取消)、ドーピング使用が発覚し、名声を失った1人です。

これだけを読むとかつてのスター選手が更に格上のスター選手であるランス・アームストロングのドーピング使用を告白した暴露本のように思えますが、そんな生半可なレベルではありません!驚くべき程、赤裸々に生々しく詳細に、当時の状況を告白しています。ハミルトン曰く、当時ツール・ド・フランスに参加していた選手特に上位選手はほぼ全員がドーピングを使用していたそうで、それは選手間では暗黙の了解だったようです。何より驚いたのがどこのチームも、チーム単位でチームドクターの綿密な管理により、ドーピングを使用していた事です。ハミルトンが自身の成績が上がらず悩んでいた時にチームドクターから「ツールのメンバーになるために健康になれ」とささやかれ、注射をしてしまった=ドーピングを始めるきっかけになったというエピソードは身体が震えました。全自転車選手の夢であるツール・ド・フランスのメンバーに選ばれるかどうかの瀬戸際の時期、他のライバルのドーピング使用は明らか、そんな中でのチームドクターからの提案で断れる選手がどれくらいいるでしょうか。仮に自分に置き換えてみても、そんな状況になって断れるほどのアンチドーピングの強い意志を貫ける自信はないです。

昨今でもオリンピックロシアチームなどでドーピング問題は話題になり、よく「ドーピング問題はイタチごっこ」といわれますが、本作ではどのようにハミルトンやアームストロングが発覚するまでドーピング検査をパスしてきたのかが詳細に説明されています。具体的な使用ドラッグや血糖値の数値なども記載されており、すごくリアルでした。読んだ印象は「検査チームよりド―ピンク管理ドクターの方がはるかに上手だな」「これじゃ発覚しないよな」という感じです。「人気スポーツは巨額の金を呼ぶ。金が集まると腐敗が生まれる」のは世界の常識ですが、どの人気スポーツ業界でも同じようなことが起きているのだろうなと思います。

間違いなく今まで読んだスポーツ系ノンフィクション本の中では1番面白いです。お勧め度かなり高いです!!